体験ガイド2026/09/17

有機栽培・自然栽培・環境再生型の違いとは?農業体験前に知りたい基礎知識

土は、育てることができます。

「有機栽培」「自然栽培」「環境再生型農業」など、体験の予約ページや生産者さんのプロフィールをめくっていると、こうした言葉に出会うことがあります。

難しそうに聞こえますが、中身はシンプルです。

畑に何を使うか、土に対して何をするか。

その組み合わせの違いが、それぞれの名前になっています。

名前だけ聞くと似た者同士に見えるこの言葉たちも、畑に立って見比べると、土の色も、雑草の生え方も、作業の手順もまるで違います。

多くの畑は、慣行栽培から始まる

農薬や化学肥料を使う慣行栽培は、いちばん多くの畑が採用しているやり方です。

病気や害虫、雑草を薬で管理できるぶん収穫が安定しやすく、価格も抑えやすいという理由で選ばれています。

そこから使うものを一つずつ減らしていくと、有機栽培、そして自然栽培にたどり着きます。

ここから先は、いわば「引き算」の話です。

有機栽培 — 農薬と化学肥料を手放して2〜3年

有機栽培は、化学的に合成された農薬や肥料に頼らず、堆肥などで土そのものを育ててから作物を育てる方法です。

「有機」「オーガニック」と名乗るには、思い立ってすぐというわけにはいきません。

単年で収穫する野菜なら種まきや植え付けの2年以上前から、果樹のような多年生の作物なら収穫の3年以上前から、化学合成農薬や化学肥料を使わない土づくりを続けてきた畑であることが条件になり、そのうえで国が定める有機JASの認証を受ける必要があります。

生産者さんのプロフィールの「認証・受賞歴」にこの文字があれば、そうした年月を経てきたという意味になります。

薬に頼らないぶん、害虫を食べる虫を畑に呼び込んだり、性質の違う作物を隣り合わせに植えて虫が付きにくくしたりと、手間のかかる工夫が積み重なっています。雑草も手や機械で一つずつ取り除くことになるため、同じ広さの畑でも慣行栽培よりずっと時間がかかります。

それでもこの方法を選ぶ生産者さんは、土を薬に頼らせすぎないことが、長く畑と付き合っていくための土台になると考えています。

自然栽培 — 肥料もやめて、土地の力だけで

自然栽培は、農薬だけでなく肥料も、たい肥のような有機肥料さえも使わず、その土地がもともと持っている力だけで作物を育てる方法です。

有機栽培と違い、自然栽培には国の認証制度が存在しません。

誰かが正解を決めてくれるわけではなく、生産者さん自身の判断だけが頼りになる栽培方法です。

何を使わないか、土づくりにどれだけの年月をかけるかは生産者さんごとに考え方が異なり、同じ「自然栽培」という言葉でも、畑によって中身はさまざまです。

土地の力が育つまで何年もかけることが多く、その分収穫量は少なくなりやすいとも言われています。

あえて雑草を生やしたままにする畑や、虫が住み着くのを見守る畑もあり、何を「そのままにするか」の判断は生産者さんの経験に委ねられています。

似た言葉に「無農薬」がありますが、これは栽培期間中に農薬を使っていないという意味の言葉で、有機栽培や自然栽培とはまた別の話です。

表示のルールについては農産物表示の注意ポイントまとめでも紹介しています。

でも、逆方向を目指すやり方もある

ここまでは、畑から何かを「やめていく」話でした。

ですが農業には、土に対して積極的に働きかけていく、逆方向の考え方もあります。

何を使わないかを競うのではなく、土そのものを元気にしていくという発想です。

環境再生型農業 — 土を「良くしていく」という発想

環境再生型農業(リジェネラティブ農業)は、何を使わないかではなく、土に対して何をするかに重点を置く考え方です。

土を耕さずに微生物のすみかを壊さない不耕起栽培、収穫をしていない時期の土をマメ科植物などで覆って土壌の侵食を防ぐカバークロップ、同じ畑で異なる作物を順番に育てて土の栄養バランスを整える輪作。

こうした技術を組み合わせて、土の中の構造や微生物の働きを育てていきます。

輪作は、同じ畑で同じ作物を作り続けると土の中の特定の栄養だけが減っていくため、性質の違う作物を順番に育てて栄養のバランスを取り戻す工夫です。

ポイントは、農薬や化学肥料の使用をやめることが条件ではないという点です。

慣行栽培を続けながらでも、不耕起やカバークロップだけを取り入れることができるため、有機栽培や自然栽培とはまったく別の軸にある考え方といえます。

「何を使わないか」の引き算ではなく、「土に何をするか」の足し算。

同じ土づくりでも、目指す方向は正反対です。

土を耕さずに置いておくと微生物のネットワークが保たれ、水はけや保水力が変わってくるとも言われていて、海外ではこうした土づくりに特化した認証制度も生まれています。

収穫が終わった時期の畑に、青々としたカバークロップが敷き詰められている光景に出会うこともあり、何も植わっていない「休んでいる畑」だと思っていた時期こそ、土が一番働いている時期だったりします。

体験の時期によっては、収穫の場面だけでなく、そうした土づくりの途中の畑に出会えることもあります。

畑ごとに、目指している方向が違う

慣行栽培から有機栽培、自然栽培へと進む畑もあれば、慣行栽培を続けながら環境再生型の技術を取り入れる畑もあります。

有機栽培をしながら不耕起も取り入れる、というように、組み合わさることもあります。

どれか一つに決まっているわけではなく、畑ごとに、目指している方向が違います。

生産者さんのプロフィールページには、栽培へのこだわりや認証・受賞歴がまとめられています。

体験に出かける前に目を通しておくと、当日どんな話を聞いてみたいか思い浮かびやすくなります。

「なぜその方法を選んだのか」「土づくりで一番苦労したことは何か」。そんな問いかけひとつで、体験の時間はぐっと深くなります。

同じ畑でも、何年か越しに話を聞くと、去年とは違う工夫が増えていることもあります。

今年から輪作を始めた、不耕起に切り替えてみた、といった変化そのものが、その生産者さんの今の関心事を教えてくれます。

気になる栽培方法を見つけたら、生産者さんのページや体験一覧から探してみてください。